NTLiveの思い出〜ロンドンから日本へ〜

🎭はじめに🎭

NTLiveアドベントカレンダー14日目を担当します、AOIciことあおいちです。

アドベントカレンダー企画のリンクはこちらです↓

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バトンを渡してくださったのは『NTLと夢小説』↓の鵞鳥さんです。ありがとうございます!

nanos.jp

 

アタクシの自己紹介:オーストラリア育ち、現地の高校を卒業後ロンドン芸大へ進学、その後日本に帰国しフリーランスで通訳・アートディレクターとして活動しています。演劇との出会いは2017年東京芸術劇場『リチャード三世』(シルヴィウ・プルカレーテ演出)で、その後の全てのプルカレーテ来日公演に美術助手兼通訳として携わっています。感謝

 

NTLiveの思い出その①:『リーマントリロジー

ロンドン芸大の卒業式後1週間ほどで日本へ本帰国する予定だったのですが、あまりにも現地での口コミが良かったためスケジュールの合間を縫って前楽の公演を見ました。ロンドン観光にきていた母を3時間英語台詞の応酬に付き合わせるわけにもいかず、一人でソワレ公演へ。カーチャンごめん。カーチャンを家に置き去りにし見た舞台は、この世のものとは思えないほど極上の観劇体験でした。

 

2019年7月ロンドンにて

 

リーマントリロジーの筆舌に尽くし難い素晴らしさ、俳優陣の途方もない情熱や表現力、エズデヴリンによるミニマルで可能性に満ちた秀でたセットデザインはみなさんご存知の通りだと思います。3人の男性俳優が、一つの家系が何世代にも渡りこの世にもたらしてきた大きな影響と、その因果について表現する有様、特に迫害と資本のループ構造は、奇妙でグロテスクで喜劇的で不思議な魅力とパッションに満ち溢れていました。物語や舞台になっている歴史的背景の特性上、3人の女性俳優のみで構成されるリーマントリロジーも見てみたいと思わされました。

 

2020年2月、池袋にて

 

半年後、私はNTLive越しにまた、日本でリーマントリロジーと出会うことができました。あんなに複雑な早口の舞台作品が、素晴らしく明快な日本語字幕付きで、日本の映画館の柔らかい椅子で見れるなんて、感激です。当時はTL上で良さを伝えることしかできなかったフォロワーとも一緒に観賞し、幕間におにぎりを食べました。ああなんて素晴らしい、日本のNTLive。このように壮大な圧迫感のある作品が国境を超えて、こんなにも手軽に楽しめることに対し、文化と文化交流への感謝の正拳突きが絶えません。NTLive、どんなに日本が貧しくなっても、俺たちのこと見捨てないでくれよな。

 

source: https://www.youtube.com/watch?v=Y6TQ-tfliFI

NTLiveの思い出その②:『ジョージ3世の狂気』

”マーク・ガティスが拘束されて辱められる”演出がある作品と聞きつけ、ロンドン現地のNTLiveで観賞したのが『ジョージ3世の狂気』(The Madness of George iii)でした。上映館はオックスフォードストリート近くのハイソな劇場で、当時のだいたいのシアターがそうであるように客層は主に中年のUpper middle classの白人たち。ジョージ3世が治世後期に発症した錯乱状態に焦点を当て(認知症、発狂などと言われているが病状には諸説あり)、初登場時にはふくふくと太って子供のような頬の色をしているマークガティスが、1幕の終わりにはやせたかなしい姿で汚れた下着を纏い、完全に錯乱した表情で王座代わりに置かれた強制器具に縛り付けられる。”I am the King of England!" (私はイングランド国王だ!)→ "No sir, you are the patient"(いいえ、あなたは患者です)のぐう畜やりとりはあまりにも有名。主な出演者は白人男性で固められており(御者のキャストに男性役の女性がいた、気がする?)、しかしこの作品が表す”イギリス国王”が”痴呆になっていく”、”矯正という名の虐待をされる”という示唆にわかりやすく目配せさせるためには必要な逆・ダイバーシティなのか、とか、想定される客層を思うに客席までが壮大な皮肉を成立させる舞台装置なのか?とか、いろいろ考えつつ、まあ純粋にマークガティスという一人の奇妙な魅力のある男性俳優が”トーチャー・デカダンス”を披露するさまを楽しんだのであった(リンク先に公式動画あり)。この作品は2018年にノッティンガムプレイハウスにて上演され、上演当時はパリに住んでいたため観劇が叶わず、下心も含めまたもやあおいちはNTLiveに救われたのであった。

 

次回のNTLiveアドベント

私にとってNTLiveは、ロンドンという、大切な思い出と苦い体験が交差する街の記憶とのつながりに深く関わっているが、実際に今回文字に書き出してみるとそこまでエモーショナルな出来事もなしに、参加してしまってすみません、という感じなのであった。とっても楽しかったので、ここまで読んでくださったみなさま、ありがとうございました。

次回16日の更新ははとさんの、”思い出ありすぎ!10年の重み!”です!楽しみにしております!